かめたんのマンション管理Memo

共用設備が設置されている車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらないとはいえないとされた事例

共用設備が設置されている車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらないとはいえないとされた事例

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共用設備が設置されている車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分に当たらないとはいえないとされた事例【全文PDF



裁判所

最高判

判決日

昭和56年07月17日最高裁判所第二小法廷昭和55年(オ)第554号所有権保存登記抹消等請求事件

主文

原判決中、上告人X1株式会社及び同X3に関する部分を破棄し、上各部分につき本件を大阪高等裁判所に差し戻す。
上告人X4の上告を棄却する。
前項の部分に関する上告費用は上告人X4の負担とする。

理由

上告代理人坂東宏、同村林昌二の上告理由第一について

原審は、
(1) 本件建物は、上告人X1株式会杜が昭和40年1月25日建築完成した鉄筋コンクリート造地下1階地上5階塔屋付の店舗付共同住宅のマンションで、地階の床面は公道とほぼ同じ高さにあり、地階には店舗、本件車庫、事務室、ホール、1階ないし5階には住宅、屋上にはペントハウスがあって、上上告会社は、本件車庫について所有権保存登記手続を経由し、被上告人らは第一審判決添付別紙(三)記載のとおり住宅を区分所有している、

(2) 本件車庫には、建築当初、第一審判決添付の別紙(二)図面(以下「別紙図面」という。)中、へ点とト点を結んだ部分に自動車の出出口としてスチール製シャッターが設けられ、また、ハ点とワ点及びカ点とヨ点を結んだ各部分に人の出入口としてスチール製の片開きの防火扉が設けられ、事務室ないし階段室を経て階上の住宅部分に通じており、他の部分はコンクリートブロック又は鉄筋コンクリート壁で仕切られ、外部と完全に遮断されていて、4台ないし6台の自動車を収容することができたが、常時これを利用するのは上上告会社だけであった、

(3) そこで、上上告会社は、昭和41年6月、別紙図面中のハ点とニ点を結んだ部分のコンクリートブロック壁を取り除き、同所にスチール製シャッターを設置し、別紙図面中のほぼA部分に相当する部分を店舗用に区画改造してこれをDに賃貸し、その後、別紙図面中のイ点とロ点を結んだ部分のコンクリートブロック壁を取り除き、昭和42年頃、別紙図面中のC部分を床が板張りの部屋に改造し、更に、昭和48年8月頃、別紙図面中、B部分及びC部分をそれぞれ店舗用に改造し、B部分をEに、C部分を上告人X3にそれぞれ貸している、

(4) 本件車庫には、本件建物全体の用に供するため、天井に配線や数個の排水管が取り付けられ、床下にし尿浄化槽及び受水槽が設置され、床面に上浄化槽及び受水槽を監視、清掃するためのマンホール3個があり、また、排水ポンプの故障に備えるための予備の手動ポンプが設けられており、専門業者が、上浄化槽及び受水槽の清掃のために年1、2回、上浄化槽の点検及び消毒薬投入のために月1回の各割合で本件車庫に立ち入る必要があるうえ、排水ポンプ等の故障が生じたときは随時本件車庫に立ち入り大掛りな修理をすることが必要で、そのためにはかなり広い空場所を存置しなければならないところ、浄化槽の上は空地もしくは空場所としておくことが建築確認の際要求されていること、マンション居住者にとって車庫は必須のものである、との事実を確定して、上事実関係のもとにおいては、本件車庫は、区分所有者の駐車場の需要に応じるために設置されたものであり、かつ、いわば機械室をかねたような構造になっているから、本件建物の区分所有者全員によって共同に利用されるように造られているとして、これを区分所有権の目的とすることができず、建物の区分所有等に関する法律にいう共用部分たるべき部分にあたるものと認め、前記上告会社の区分所有権を否定し、被上告人らの本訴請求を認容した。

しかしながら、一棟の建物のうち構造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分であるが、そのうちの一部に他の区分所有者らの共用に供される設備が設置され、このような共用設備の設置場所としての意味ないし機能を一部帯有しているようなものであっても、上の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、その余の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ、かつ他の区分所有者らによる上共用設備の利用、管理によって上の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、かかる使用によって共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、なお建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となりうるものと解するのが相当である(最高裁昭和53年(オ)第1373号同56年6月18日第一小法廷判決参照)。

これを本件についてみると、原審が認定した前記事実によれば、本件車庫は、構造上他の部分と区分され、それ自体として独立の建物としての用途に供することができる外形を有する建物部分であるが、他の区分所有者らの共用に供される設備として、前記のように、天井には配管類が取り付けられ、床下にはし尿浄化槽と受水槽があり、床面には床下に通ずるマンホールが設けられ、本件車庫内に手動ポンプが設置されていて、上浄化槽等の点検、清掃、故障修理のため随時専門業者が本件車庫内に立ち入って作業をすることが予定されているというにすぎず、上共用設備の利用、管理によって本件車庫の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずるかどうかの点についてはなんら明確にされていないし、マンション内の車庫は車庫であるとの理由によって区分所有者らの共用部分であると認める論拠に乏しいから、原審の認定した事実のみでは、本件車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう建物の専有部分として区分所有権の目的となることを否定することはできないものといわなければならない。そうすると、原審が、上の点を斟酌することなく本件車庫を共用部分であると判断したのは、建物の区分所有等に関する法律の解釈適用を誤った違法があるといわざるをえず、この違法が原判決に影響を及ぼすことは明らかであるから、論旨は理由がある。したがって、原判決中、上告人X1株式会社及び同X3に関する部分は破棄を免れず、更に審理を尽くさせるため、これを原審に差し戻すのが相当である。

同第二について
所論は、原審において主張しなかった事項について原判決の違法をいうものであって、採用することができない。
よって、民訴法407条1項、396条、384条1項、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 宮崎梧一 裁判官 栗本一夫 木下忠良 鹽野宜慶)

ではまた。。。



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